【国際バカロレア】知っておきたい!IBDP生物の特徴とコツ 

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こんにちは、ふりかけです。

今回は、去年履修し終わった、国際バカロレアプログラムの生物についてお話ししたいと思います。長文ですが、これから受講するかどうか迷っている人や、今まさに生物で行き詰まっている、という方に参考にしていただけると嬉しいです。また、僕自身も履修を始めるまで、生物の何が難しいのか分からなかったので、同じような状況の方のお役に立てれば嬉しいです:)

特徴・気をつけるところ

IBDPの生物の特徴は、一言に情報量です。でも、単に「これはこう」や「あれはあれ」みたいな一問一答がほぼないのがまた大変な理由です。僕はHLを履修したのですが、SLのシラバスと比べるとHLの内容は格段と難しいです。特に生化学・Biochemなどの、目に見えない小さいレベルの話には気を付けたいところです。逆に、ここさえおさえれば、多少安心できます。実際、筆者も転校とかの都合で生物は2年ぶりの履修でしたが、なんとか耐えました。

その1:イオン・酵素の働き

日本の高校の生物もほぼ同じ内容だと思いますが、イオンや酵素の働きは、ミクロで想像しにくい点で難しいと言えます。例えば、Topic 8 のクレブス回路やカルビン回路で、NAD+がいつ、何回酸化するのか、ということを覚えるだけでなく、説明できなければいけません酵素では、Topic 7 の DNAの複製はもちろん、今コロナで耳にする様になったPCR検査法の仕組みなどが挙げられます。極め付けは、Topic 6 の脳内の電気信号が伝わるメカニズムで、筆者も苦しめられました。また、怖いのはこの小さなスケールの話になると全体像を忘れがちになってしまうことです。今習っている反応は、どこで起きているのか(例:ミトコンドリアの細胞膜の間なのか、クリステなのか、など)ということをたびたび意識することがポイントです。

その2:遺伝子

生物の専門用語が一番ややこしいのが、遺伝学です。授業中は、先生が何を言っているのやらちんぷんかんぷんな時が多かったです。特に、染色体のどこがどういう名前で、どの様な動きや反応が〇〇と呼ばれている、など一つ一つ単語と指し示すものを照らし合わせる作業が欠かせません。例えば、相同染色体(Homologous chromosome)が、減数分裂のどの時点から姉妹染色分体(Sister chromatid)になるのか、があります。あとは、遺伝子のAaBBみたいな表記が発現する症状などによって決まっているので、それを覚えたりなどです。

その3:問題の形式

上で話した内容を見て、「なんだ、それくらい一条校の高校生物と同じやん」と思われた方も少なくないかもしれません。でも、IBで生物をする怖さは、その質問形式にあります。例えば、「RNAの翻訳の過程を説明しなさい」みたいな問題文が、A4一枚ほどの回答欄と共に出題されたりします。この場合では、8点(大体50点満点中)で出題されていることが多いです。もちろん、全てがこうではないのですが、この手の問題が成績を左右しやすい要であることも確かです。学んだ専門用語を正しく使用して、丁寧に説明すると高得点が狙えます。幸いにも、こういう問題が出るトピックは限られています。なので、事前に自分なりの答えを過去問一つ一つに対して書いて、あとはそれらをひたすら覚えるのみです。結局、暗記ゲーです。

その4:単元のクセ

IBの生物が始まって少し経つと、「なんだ、意外といけんじゃん」と思う方も少なくないと思います。ご安心ください。もう間も無く難しさがレベルアップします。学校にもよりますが、教える単元の順番で後回しにされがちなのが Topic 6 です。でも、内容は人体の主要な臓器の働きと仕組みから免疫機能、さらにはホルモンまで、幅広い分野をカバーする超・大型ユニットなのです。これが最後になると、時期的にも、他の教科の全部の課題の提出期限と重なったり、その傍大学の書類などをまとめなければならないので、ガチで余裕がありません。事前に、働く細胞などのアニメを観て、基礎知識を固めたり、ほんのちょっとでも予習しておくと良いと思います。そのほかにも Topic 2 や 8 は内容が多いので気をつけるべき単元です。


対策・勉強法

図を書いて予習する

僕は、とにかく図を書くことに専念しました。というのも、一年目の最初はノートのとり方もわからず、ただひたすらキーワードや解説文を要約していました。が、初めてのユニット・テストの前になってノートを見直そうとしたところ、とても見返しにくかったです。それからは、少しずつまとめサイトや先生のスライドの図をノートに大きく書いて、それに注釈を入れる形でノートをとり始めました。するとノートが見返しやすくなった上に、その図を授業の前に描く様になり、効率よく予習する習慣がつきました。個人的にはこの方法がオススメです。

また、実際の試験でも、図を描いて説明すると要点を逃しにくかったり、加点対象になったりするので、実用的です。

論述形式・Essay questionは、理解→暗唱!

長文の対策はただ一つ、古文の動詞の活用と同様に、暗唱できれば勝ちなので、それまで何度も繰り返すことです。このためには、まず物質の名前は気にせずにおいて、全体の流れだけを覚えます。そして、その後に名前を覚えていくと、記憶に定着しやすいです。一夜漬けでテストに挑む強者もいなくはないですが、5月の最終試験の頃には忘れているのが落ちなので、その都度時間を惜しまず覚えた方がいいと思います。

コツ

イラストが得意だと超有利!

前にも述べたとおり、IBDPの生物の試験では、メカニズムを説明することが比較的多いです。この際に、単に文だけでなく、さらっと図や絵を描いて図示することができると、なお良いです。図示せよとは問題文になくても、配点が高い問いでは、なるべく図示したほうが点が狙えます。あと、せっかく図を描いたのに注釈を忘れると採点対象にならないので、必ず対応する部位の名称を書き入れるようにしましょう。

とにかく書きまくる!

まだIBDPの試験はオンライン化されていないので、全て手書きです。そして、試験本番では論述課題などの設問もあるので、試験中は数時間ずっとペンを握りっぱなしで、ひたすら頭から出る情報を書き出しています。それに備えるためにも、ノートは手書きでとることをお勧めします。また、PCでノートをとっても、必ずテスト前には紙媒体で書き続けることを練習した方が後々楽です。

Optionに迷ったらC!

理系の科目にはオプションという、ある専門分野に特化した内容の大きな単元があり、5つほどの選択肢から選べます。とは言ったものの、学校や先生が既に選んでいることが多いので、生徒はあまり自由にできないことがほとんどです。ですが、もし生物のオプションを何にすれば良いのか迷う場合があったら、迷わずCをお勧めします。興味や得意分野は人それぞれですが、環境学が好きなら尚更Cが一番良い選択肢です。なぜなら、一番良い成績を取りやすいからです。こう言うと聞こえは悪いですが、HLの人は特に、既にたくさんのメカニズムをやっとのことで覚えたと思いますので、比較的情報量の少ないCを選んでおいて損はないと思います。


IA / 内部評価

IAは、IBDPを他のカリキュラムから差異化する特徴であり、風物詩となっています。IAは、小さな研究レポートで、多くの場合、RQと仮説を立てる→実験→その結果を分析、という内容です。また、多くの場合、複数回作成して、最終稿に選んだものを提出する、というものです。僕の学校の場合は、3つのドラフトから一つ選んで提出する、という形でした。また、実験の際は、実験対象がうまく測定などができるかを必ず事前に確認しておく必要があります。当たり前かもしれませんが、僕は全くそれを意識していなかったので、初めてのIAで苦戦しました笑

オススメIA

本当に良いIAは、ほとんど生徒がRQを身近なものから抽出するタイプのものですが、皆が皆そう上手くいくわけでもないです。そこでオススメしたいのが、アミラーゼなどの酵素の実験か、フィールドワークです。何故かというと、分析とオリジナリティーで高得点を望めるからです。酵素だと、実験しやすいのはもちろん、納豆やキムチなどの身近なものに繋げやすいです。また、フィールドワークは一見小学生っぽいですが、Topic 4 の環境の単元を活用すれば、歴とした研究レポートになります。特に植物の葉の気孔がどれだけ詰まっているか、や苔癬などの指標種 (indicator species) などを、異なる環境で観察して、環境汚染に繋げて分析するのが良いアイデアだと思います。実際、僕は地上からの距離と方角と、苔癬の成長具合の相関関係を調べたIAで7(7段階評価中)の評価をもらいました。

また、実験をする暇がない(EEで理系科目を選択中の場合は特に)という人のために、データ分析だけのIAもオススメです。その場合、トピックには、質の良いデータがたくさんある研究分野を選ぶことをお勧めします。多くの場合、分析するデータは多い方が有利です。また、足りなければ自分でデータをアンケートなどで収集して増やしたり、比較したりすることもできます。コロナの影響などで学校に行けない場合は、特に重宝するスタイルだと思います。

失敗談

一方、IAを初めて取り組む時は、自分で実験をデザインすることも初めてだったので、いろいろやらかしました。初めの実験は、異なる量のイースト菌発酵で出たガスの体積を風船で測る、というなんともど素人(今はもう少しマシなはず...)な実験をしました。失敗した点は:

1)酵素の実験をしたいのにイースト菌を使っちゃってた

イースト菌酵母が出す酵素は何百もあるそうで、どの酵素の働きを測定しているのか、分からなくなってしまいました。結局、酵素ではなくイースト菌の研究として提出しました。

2)発酵で出たガスを風船で採取した

→水上置換方とか、いくらでも方法があるのに、はじめは風船で気体を採取してました(笑)実験の試作段階で、ガラスのガスシリンジに変更しました。予防注射とかで使われるプラスチックのものだと、摩擦が大きいので、ガスの体積が増えてもシリンジのプランジャー(液体を押し出す部品、下の図だと灰色の部分)が動かなかったので、手動で動かさないといけませんでした。でも、手動で動かすと、値があまりにも変動したので、ガラスのシリンジを先生に頼んで使わせてもらいました。

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こんな感じのセットアップを5つ作って、どんどんデータを回収してました(出典:

Science - Lessons - Blendspace

Science - Lessons - Blendspace

3)出てくるガスの量が明らかにおかしかった

→適当に砂糖とお湯の量を決めてしまったので、発酵の際に出たガスが、ガスシリンジで測れる体積を超えてしまいました。なので、つきっきりでプランジャーがメモリを超えたらリセットして装填し直してました。本当は事前にシリンジで測れるちょうど良い体積のガスが出るように、イーストや砂糖の量を調整しておくべきでした。

実験には反省点がつきものですが、この回だけはちょっとばかり多かったかもしれません 笑

おすすめサイト&YouTuberまとめ

授業で先生の解説も十分聞くべきですが、それでも分からない場合はオンラインの無料教材に頼りましょう。また、予習復習に重宝するのでブックマーク登録をしておくと便利です。

ウェブサイト

名前はちょっと謎ですが、内容は本当に神っています。正直な話、このサイトなしにはIBの生物はとてもきついです。オフライン対応のアプリもあるので、スキマ時間に予習復習ができます。

https://ib.bioninja.com.au/welcome-to-the-bioninja/

 

あと、生物だけでなく、IBDP全体においても、Redditというまとめサイトは超重要です。r/IBO というコミュニティーには、全世界のIBDP履修生・卒業生が入っており、わからない点を相談したり、ノートや問題集の共有に重宝します。また、僕は課題でアンケートに協力してもらえないか投稿したところ、結構たくさん回答がもらえました。ついでに言っておくと、memeの宝庫でもあります。

とにかく、一回リンク先に飛んでみてください。

理系の科目のタグがついた投稿の一覧はこちら↓

https://www.reddit.com/r/IBO/?f=flair_name%3A%22Group%204%22

 

ほかにも以下のサイトは時々使ったりしてました:

スライドが充実:https://www.bioknowledgy.info/general-resources.html

スライドが超充実:https://sites.google.com/a/lsr7.net/ib-biology-file-cabinet/topic-1-cells

同じくスライドが充実(SL):https://sites.google.com/a/mulgrave.com/creis_biologysl/

スライド+動画:https://i-biology.net/ibdpbio/02-cells/cell-theory/

生物専用用語の辞書:https://www.biologyonline.com/dictionary

まとめノート(pdf)が充実:https://www.biologyforlife.com/

おすすめYouTuber

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IB Bio のカリキュラム全部をカバーする、定番の先生

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Topic 7 や 8 でカバーする、生化学や分子レベルの解説はこちら↓

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短くまとまった解説と、図の書き方の解説はこちら↓

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生物の基礎知識を、丁寧に解説した動画はこちら↓

 

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なんで日本語?と思うかもしれませんが、僕は、英語よりも日本語の方が強いので、訳が分からなくなったりした際には日本語の解説を聞いています↓

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IBDPで採点をしている先生からのアドバイス

僕の生物の先生は、実際IBDPの採点もしている先生だったので、いろいろな裏事情も交えてIBのコツを教えていただきました。受け流し情報なので、もしかしたら数などが違うかもしれませんが、採点者の目線はとても貴重なので、是非参考にしていただければと思います。

 IAではオリジナリティと運が鍵

IAを採点する先生は、とにかく効率重視で採点することが多いそうです。というのも、採点者は限られた期間に数百のレポートが本部からメールで送られるらしいです。先生は、それら一つ一つを採点基準のクライテリアと照らし合わせて評価しなければいけません。そんな膨大なIAを見ていく中で、独創的でオリジナリティーのあるIAは、印象に残り、目を惹きます。逆に、ありきたりなトピックのIAは、印象に残りにくい上に、過去に雛形となるような凄いクオリティの物が提出され、採点基準が高くなっtていることが多いです。では、どうすれば良いでしょうか。結論は:

1)普通のトピックでも、実生活への応用を重視する

2)地域に限定・特化したトピックを選ぶ

3)身近なものを生物の視点で常に観察する

です。

1)と2)はオリジナリティを出すための方法です。例えば、納豆の酵素ナットウキナーゼは日本食という文化に繋がり、学生が親近感を持って楽しんで取り組めます。でも、個人的には3)をお勧めします。というのも、運を見方にさえつければ、オリジナリティに加えて新たな付加価値ができるからです。というのも、実際に自分で考えて選び抜いたトピックのIAは、より手の込んだものになりやすいし、必ずその努力が反映されます。これは、採点者にとって一目瞭然なので、いかに思い入れが深いトピックと巡り合えるか、そしてその巡り合うチャンスを増やして逃さないために、普段からの観察は重要です。

テストの回答は、正確性より数!数打ちゃ当たる!

少し大袈裟ですが、数で勝負、というのはあながち間違ってはいません。なぜなら、IBの生物の採点方法は加点方式で、内容が矛盾しない限り、減点対象にはなりません。実際、最終試験の解答には、「〇〇ということについて述べられていたら□点」みたいな表記がほとんどです。特に、論述課題のセクションでは、要点を思い出せなかったりしてパニックになることがあるかと思います。(僕も焦ると余計に頭が回りません笑)そんな時は、深呼吸して、とにかく思いついた単語やポイントを片っ端から書くのもアリです。時間や回答スペースが限られているので、超オススメではありませんが、その中に正解があるかもしれないので、一つの方法として頭に置いておく価値はあります。

最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

とても長くなりましたが、僕がIBDPで生物HLを履修していて、共有したいな、と思ったことをお話ししました。参考にしていただけると嬉しいです。

 

では、また。